「手づくりで建てたログハウス」と「結婚式の意味」

公開日: 2014-06-03 結婚式のこと

ドーナツ・ラボ新聞 vol.10 掲載記事)
 
報告会前の散髪の様子。知っている人に髪を
切っているのを見られるのは恥ずかしい。



  いきなりですが僕は、去る5月3日、親族や仲間に集まっていただき結婚報告の機会を持ちました。滋賀県比良の会場も、料理も、両家の出会いの場作り も、全て手づくり、またはご縁のある方の協力によって準備をしました。そのせいもあるかもしれませんが、結婚式ってものすごい催しだなー、と思うようにな りました。






会場となったログハウス

前回、結婚について書いた時には自分でも煮え切らない表現だと思いつつ(笑)淡々と思うところを書きました。しかし、結婚式を終えた今、結婚にまつわる ことの中心は結婚式なんじゃないかと思うくらい結婚式に対するエネルギーが高いです。そんなこともあって、前回と似たテーマではありますが、今回は結婚式 について書かせていただこうと思います。

 結婚式と聞いて、以前の僕が考えていたことは、参加者であれば結婚する二人をお祝いする場、主催者であれば二人の関係者へのパートナーのお披露目という ものでした。しかし、遠方にいる親族を僕たち二人の責任の元に集め、僕たち二人のやり方でもてなしてみれば、そんな軽い言葉で表現できるものではなく、す ごくパワフルで不思議な力の溢れている場だと感じました。



親族一同で円になって言葉を交わすシーン。

 以前、ある友人と話をしたとき「生まれ育った岡山から全く出ようとしなかった祖父が40年ぶりに土地を離れたのは、孫である自分の結婚式に出席するため だった。」と語っていました。40年間住んでいる土地を離れなかった老人が、土地を離れる理由になる結婚式とは一体何なんでしょうか。普段、僕は人が集ま る場を開く機会が多いのですが、どんなワークショップとも、どんなセミナーとも一線を画す、質感の違いがそこにはある気がします。唯一、同じ質感を持って いるのがエンカウンターグループ(円坐)のような非構成の場で、そういった場で誰かの話を聞いていると、その方の家族や親族の面影を鮮やかに見せてもらう ことがあります。しかし、結婚式はその面影がリアルに実現してしまったような密度の濃さがありました。



橋本久仁彦さん率いる坐フェンスのメンバーに
来てもらって舞台をしてもらいました。


 振り返ってみれば、僕とパートナーの出会い自体も決して二人だけのものではなく、親族やこれまで出会ってきた人も含まれていたように思います。例えば、 僕たちが初めて話をするきっかけになったのは、お互いのおばあちゃんの話でした。小さい頃によく面倒を見てもらっていたパートナーのおばあちゃんが今は入 院していることを聞いて、僕は3年前に病院で亡くなった自分の祖母のことを思い出しました。また、パートナーの親や姉妹の話を聞けば、その面影から僕の両 親や兄弟のことを思い出しました。そうした、周りにいる人達の面影を感じながら僕らは出会ったのではないかと思うのです。

 このように考えると、僕たち二人が出会った時に僕たちの中で親族同士の出会いは既に起こっており、結婚式は二人の中にあるご縁が形を伴って集い対面する 場だったんじゃないかと思えるようになりました。そして、実際に当日を迎えると、そこに集った方々の持っている面影同士までもが交差して、もはや僕たちに は把握することができないくらい膨大で密度の濃い出会いが起こっているような、僕たちの結婚式はそんな場になりました。それは、実現したこと自体が奇跡のような、ありえないことを実現させてしまったような、まさに「有り難い」場だったのだと改めて思います。


プレッシャーを和らげてくれた姪っ子達の余興


 正直、当日を迎えるまでの僕は結婚式がこれほどの豊かな場だとは思ってもいませんでした。もちろん、偶然にも手づくりの式をすることになったので、そこ に至るまでにはかなりの力を割きましたし、時間もたくさん使いました。誰かに依頼しているわけじゃないので、結婚式を開く全ての責任を二人で負うプレッシャーを感じる時もありました。

 でも、それが結果として「有り難い」場につながった気がしています。そして、そんな場を作るためのタネが、自分の外にあるものではなく、自分と自分の近くにいる人の間に“既にあること”だったという事実は、とても大きな発見でした。これから僕が生きていく中で、場を開いたり、仕事を創ったり、何か事にあ たるときにも、大切にするのは、そんなタネを大切に形にすることだけなのか、と思うとふっと体が軽くなってきます。


準備を手伝ってくれた友人。
これから何かと関わり合っていくであろう人たち。


 ということで、これから結婚を考えている方は、仕事を辞めてでも思う存分結婚式をしてみることをオススメいたします。普通、式を挙げるための労力はお金を支払うことによって免除するのだと思いますが、お金を支払うことでカットされているのは労力だけではないようです。丸ごと引き受けた何かに見合うだけ の、何にも代え難い場がそこにはあった、という証言をここに提示いたします。ご相談承ります。

エセ結婚評論家  小林 けんじ
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