ぼくの東京物語 その13 東京 東西円坐

公開日: 2015-06-19 ぼくの東京物語

東京福島にいったときのことを小説風に綴っています。
円坐やそこで見える景色を文字で表す実験でもあります。

前回までの記事
その1 深夜バス
その2 聡志とじゅんちゃん
その3 東京
その4 わーさんとかよちゃん
その5 テレビを「持たない」人のダイアログサークル
その6 夜の帰り道
その7 聡志とじゅんちゃんの家の朝
その8 夫婦サミット
その9 影舞 
その10 メキシコ料理店 
その11 たぬき村 
その12 円坐と橋本久仁彦さん

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時間が近づいて、その日の参加者が集まってくる。そのままゆっくりと円坐が始まる。

始まると言っても円坐には目的もプログラムも無く、その名のとおり円くなって坐るというだけの集まりだから、聡志と僕から一言ずつ挨拶をして、しばらくは沈黙したままの時間が流れていた。

その日は空が真っ青な快晴で、カラッとした風が絶え間なく部屋を通り抜けていた。どこかのドアがギイギイと音を立てて鳴っている。

日曜日のお昼前、東京、ぼくの座っているところからは、少し遠くのマンションの屋上に干してある洗濯物がゆらゆらと風に揺れていた。


心地よい時間にウトウトしている人が出始めたころ、ふいに一人が「船に乗ってるみたいですね」とつぶやく。それを聞いて、ギイギイという音が船のきしむ音に聞こえるとか、冷蔵庫がヴーーっと動いている音は船のモーター音のようだとか、そんなことをひとしきり話した後、またしばらくは一緒の船に乗りながら静かな午前の終わりの時間が流れていく。

名古屋から来た参加者が、東京の早いスピードと、この場所で流れるゆっくりした時間の違いのことを口にする。ぼくは東京に来てから感じた東京らしさについて話し出す。

ぼくたちが感じる東京らしさは、お化けのように誰もいないのに感じる何かなんじゃないか、そんな話をしながら午前が通り過ぎていく。

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