「おもひでぽろぽろ」 感想 その3 アベくん

公開日: 2015-12-04 映画 日記

おもひでぽろぽろの感想です。

その1 無口なお父さん
その2 凛としたおばあちゃん
はこちら。

アベくんはきっと、
タエ子ちゃんの手を汚したくなかったんじゃないだろうか、
というと妄想を膨らませすぎだろうか。



おばあちゃんから切り出された言葉によって
タエ子が思いだしたのは転校生のアベくんのことで、
学校に来て間もなくまた転校していくアベくんから言われた
「おまえとは握手してやんねぇよ」という一言が
なぜか突然よみがえってくる。

周りの友だちがいつも汚いアベくんの悪口を言っても、
じぶんだけは一緒になって話をしなかったこと。

それでもやっぱり隣りの席にいるアベくんは汚くて、
心の中では嫌だと思っていたこと。

そのアベくんが最後に「おまえとは握手してやんねぇよ」と
自分に向かって言ったこと。

話を聞いているトシオは「なんでそんな小さなことを今?」
といった雰囲気で、でもそれが今のタエ子にとって
とても大切なことだとも分かっている様子で話を聞く。

トシオには、力も強くなくて友だちもいないアベくんが
唯一わがままを言えるのがタエ子ちゃんであり、
タエ子のことが好きだったんじゃないか、ということが
はっきりと結びついている。

ここでも、アベくんが本当はどう思っていたのかは
やっぱり最後まで分からないけれど、
少なくともタエ子が思っているような、
「汚いと思っている心を見透かして傷つけようとした」
というアベくんの見方は、ほとんど的を外していることだけが分かる。

いや、それが例えアベくんが本当に思っていたことだとしても、
小学生のタエ子ちゃんが、そのときどんな想いでアベくんと
接し続けていたのかということが抜け落ちている。

ぼくは、トシオの言うようにアベくんがタエコちゃんのことを
好きだったとまでは思わない。

自分が汚いことは自分でも分かっている。
でも、(おそらく家の事情で)それはどうすることもできない。
汚いことで人から避けられることも知っている。
けれど、タエ子ちゃんは汚いことは嫌がっても
それでじぶんの存在まで嫌がって避けようとはしなかった。

最後にクラスメイトと握手をするのは、
先生に言われて仕方なくしたことで、
だれも握手をしたがっていないことも知っている。

だから、タエ子ちゃんだけは握手をしたくなかった。
彼女も握手をしたくはないはずだし、
自分もタエ子ちゃんだけは嫌がることをわざわざしたくないから。


ずいぶん、美化した妄想かもしれないけれど、
トシオの言ったことも自分の世界にアベくんを重ねた姿なわけで、
例えばぼくが、アベくんを自分の世界に登場させればこうなる。


こんな風に、過去と現在はすぐ隣りでつながっていて、
それは10年前でも、20年前でもあまり関係はない。
だからなのか、英語のタイトルは「only yesterday」となっていて、
この作品の世界観をよく表している言葉だと思う。



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