人と組織の物語

公開日: 2014-10-10 おはなし

たとえば、目の前に困っている人がいて、
食べものや教育、病気になったときの手当や
住む場所など、何かをあげる。

その人はよろこんでくれる。
うれしくて、そんなことを続けていくと、
ときどきその人から何かのお礼をもらったりする。




そのうち、
ほかにも同じように困っている人がいることを知る。
そして、同じようになにかをあげる。

少しずつ数が増えていって、自分だけでは追いつかなくなる。
そこで、一緒にやってくれるひとを集め
あげるものが不足しないように準備をする。
それから、準備に見合うようにお礼の金額を決める。

次第に、関わる人が増えて、扱うお金も大きくなる。
このとき、ただの”人の集まり”は、組織になる。
組織のなかでは、困っている人にできるだけ早く、
できるだけムダがないように何かを届ける。
このとき、届けられるものには
「商品」や「サービス」という名前がつけられた。

しばらくして、
商品やサービスにミスが出ないようにルールができた。
ルールを守れない人は、組織からいなくなった。
その代わりに優秀な人材が入るようになった。

そうして、たくさんの困っている人に
たくさんのモノやサービスが届くようになる。
最初の”お困りごと”が解決したら、次の”お困りごと”へ。
今では、ずいぶん多くのお困りごとが解決されて、
たくさんの人がその組織で働いている。

そして毎朝、その組織の中では、
最初に助けた”あの人”のことが語られている。
「”あの人”が生まれない世の中にするのが私達の使命だ」と。

でも、その組織の中に、
”あの人” に”何か”をあげた人はもういなかった。

いつからいなくなったのかは誰も知らない。
2人目に何かをあげたときにはいたはずだった。
3人目のときも、4人目のときも、5人目のときも、
たしかに一緒にいたはずだった。

何人目に、何をあげたのか、
誰もわからなくなったとき、
その人はいなくなった。

だから、いつからいなくなったのかは誰も知らない。


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