ぼくの東京物語 その9 影舞
公開日: 2015-06-10 ぼくの東京物語
東京福島にいったときのことを小説風に綴っています。
前回までの記事
その1 深夜バス
その2 聡志とじゅんちゃん
その3 東京
その4 わーさんとかよちゃん
その5 テレビを「持たない」人のダイアログサークル
その6 夜の帰り道
その7 聡志とじゅんちゃんの家の朝
その8 夫婦サミット
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会場となる施設に着いて部屋に入る。つるっとした床の上に、茶色い天板の折りたたみ式の長机、その机に三つずつパイプイスが入って、学校の教室のように机とイスが整列していた。
4人で机とイスを動かして、ぼくたちと参加してくれる人が円くなって座れるようにイスを並べる。お茶を用意していると、申込をしてくれた人たちがポツポツと会場に到着する。
静かにその日の集いが始まる。当然のように人が集まって一緒に座っているけれど、この企画が成立するにはいくつかの不思議な経緯がなければならないはずで、でも、そんな不思議さとは全く関係なく当たり前のように一緒に集まり、今まさに始まろうとしているこの瞬間がとても好きだった。
前半の対話の時間が終わり、影舞の時間がスタートする。
話を聞くだけでは見えてこなかったその人の存在感や、大げさに言えばパートナーとの在り方が見えてくる。話を聞いている時にはパートナーに気を使っている優しそうな男性に見えていた参加者の一人は、影舞が始まると女性を誠心誠意支える紳士に見えた。
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