ぼくの東京物語 その8 夫婦サミット

公開日: 2015-06-09 ぼくの東京物語


東京福島にいったときのことを小説風に綴っています。

前回までの記事
その1 深夜バス
その2 聡志とじゅんちゃん
その3 東京
その4 わーさんとかよちゃん
その5 テレビを「持たない」人のダイアログサークル
その6 夜の帰り道
その7 聡志とじゅんちゃんの家の朝

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その日は土曜日で、「夫婦サミット」という名前の催しをお昼から半日開くことになっていた。実は、ぼくたち4人全員で開く企画は、全部で6つある企画のうちこの1つだけで、他の企画は聡志とぼくが企画したもの。


ところが案内が出来上がるのがもっとも遅かったのがこの企画だった。それは、やる気がなかったとか、やりたくなくなったという理由からではなくて、今から思えば、あまりにぼくたちがやりたいことの中心すぎて、言葉に表すことが難しかったからなのだと思う。


案内ができるきっかけをくれたのは、企画のタイトルだけを見て申込をしてくれた聡志の友人だった。内容も説明もまったくないのに参加したいという問い合わせが先に来て、それを追いかけるように聡志が一気に案内を書き上げた。

それがその日から3、4日前のことで、結局、当日までに聡志の友人の他にも参加を申し込んでくれた人があらわれ、ぼくらは参加者に引っ張られるようにその会を開くことになった。

お昼前になって、昨日の夜帰った道を今度は逆に辿ってその日の会場に移動する。太陽に照らされて、鮮やかに目に映る家と車と緑、聡志とじゅんちゃんの暮らす街の姿が少しずつぼくの中で景色として刻まれていく。

昨日の夜から会場にたどり着くまでの間、ぼくらは何度かその日にやることを話しあっていた。そして、集まった人とパートナーシップについて話す時間を作ることと、影舞をする時間を作ろうということだけが決まっていた。

影舞は、二人一組で指先をそっと触れ合わせて、どちらともなく生じる動きを丁寧になぞっていく即興の舞。舞い手には何かを演じたり、魅せようという意識はまったくないのだけれど、見る人が何故かそれぞれに自分の心の中の風景を重ねて、舞いの中にストーリーを見たり、過去の出来事を見たりする、それぞれの影が映し出される舞。

影舞もそうだけれど、東京で開く企画に目的やプログラム・効果などを設定していないのは、ぼくたち4人が共通して影響を受けている橋本久仁彦さんの存在が大きいのだけれど、今はその話をするのは置いておいて、二日目の土曜日の時間を進めていく。

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