ぼくの東京物語 その11 たぬき村
公開日: 2015-06-13 ぼくの東京物語
東京福島にいったときのことを小説風に綴っています。
前回までの記事
その1 深夜バス
その2 聡志とじゅんちゃん
その3 東京
その4 わーさんとかよちゃん
その5 テレビを「持たない」人のダイアログサークル
その6 夜の帰り道
その7 聡志とじゅんちゃんの家の朝
その8 夫婦サミット
その9 影舞
その10 メキシコ料理店
=====
東京3日目の朝。
今日は朝早くから家を出る。といっても8時台なので、特別早いわけじゃなかったけど、昨日は朝がゆっくりだったのでちょっと急いでその日の会場に向かうバスの停留所に向かう。
今日は「きぬた」という土地の「たぬき村」というところが会場らしい。大阪にいる頃から会場の名前は聞いていて「何でたぬきなんだろう」と思っていたら、バスを降りてから地名を聞いて「なるほどな」と勝手に納得した。しゃべるほどのことでもない気がして、特に話題にはださなかったのだけれど。
会場は古びた団地風の建物の中にある一室。昔は何棟もあったのかは分からないけれど、今は一棟だけがあって住人もすんでいるらしい。その中の一室を住人用のコミュニティスペースにしているらしく、聡志はその部屋のオーナーと知り合いで、今日みたいな日には貸してくれるんだとか。
きっちりと敷地や区画で整理された東京の街の中で、その団地の中は草が生い茂って道に重なっていたり、境界線が少しゆるんだ空気が漂っていて、個人的にはとっても落ち着いた。
階段を昇ろうとすると、ヨボヨボで歩くのも一苦労、といった風な年寄り猫が「ニャァ」と一言挨拶をする。ぼくは真後ろから聞こえた音にビックリして「うわぁ!」と大声を出してしまったけど、その声に驚いたのはむしろその年老いた猫の方で、申し訳ないことをした気持ちになって階段を上がった。
部屋に入ると、古びた外装と違って、白塗りの壁と物が少なくてさっぱりとした空間、でも人が集まって何かをするには必要な座布団やコップなどは十分に用意されていて、ここが人がゆっくりとしていい場所だということが空間のすべてから伝わってくる。
窓を開けると、遠くの方まで見渡せる景色から風が入ってきたり、周りにある大きめの木が目に映ったり、天気のいいその日の眺めは絵に描いたようにさわやかで、ものの数分でそこを気に入ってしまった。
飲み物を用意したり会場のセッティングをして参加者を待つ。今日は「東京 東西円坐」を開くことになっている。
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その1 深夜バス
その2 聡志とじゅんちゃん
その3 東京
その4 わーさんとかよちゃん
その5 テレビを「持たない」人のダイアログサークル
その6 夜の帰り道
その7 聡志とじゅんちゃんの家の朝
その8 夫婦サミット
その9 影舞
その10 メキシコ料理店
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東京3日目の朝。
今日は朝早くから家を出る。といっても8時台なので、特別早いわけじゃなかったけど、昨日は朝がゆっくりだったのでちょっと急いでその日の会場に向かうバスの停留所に向かう。
今日は「きぬた」という土地の「たぬき村」というところが会場らしい。大阪にいる頃から会場の名前は聞いていて「何でたぬきなんだろう」と思っていたら、バスを降りてから地名を聞いて「なるほどな」と勝手に納得した。しゃべるほどのことでもない気がして、特に話題にはださなかったのだけれど。
会場は古びた団地風の建物の中にある一室。昔は何棟もあったのかは分からないけれど、今は一棟だけがあって住人もすんでいるらしい。その中の一室を住人用のコミュニティスペースにしているらしく、聡志はその部屋のオーナーと知り合いで、今日みたいな日には貸してくれるんだとか。
きっちりと敷地や区画で整理された東京の街の中で、その団地の中は草が生い茂って道に重なっていたり、境界線が少しゆるんだ空気が漂っていて、個人的にはとっても落ち着いた。
階段を昇ろうとすると、ヨボヨボで歩くのも一苦労、といった風な年寄り猫が「ニャァ」と一言挨拶をする。ぼくは真後ろから聞こえた音にビックリして「うわぁ!」と大声を出してしまったけど、その声に驚いたのはむしろその年老いた猫の方で、申し訳ないことをした気持ちになって階段を上がった。
部屋に入ると、古びた外装と違って、白塗りの壁と物が少なくてさっぱりとした空間、でも人が集まって何かをするには必要な座布団やコップなどは十分に用意されていて、ここが人がゆっくりとしていい場所だということが空間のすべてから伝わってくる。
窓を開けると、遠くの方まで見渡せる景色から風が入ってきたり、周りにある大きめの木が目に映ったり、天気のいいその日の眺めは絵に描いたようにさわやかで、ものの数分でそこを気に入ってしまった。
飲み物を用意したり会場のセッティングをして参加者を待つ。今日は「東京 東西円坐」を開くことになっている。
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