【書評】サーリンズ 石器時代の経済学

公開日: 2016-03-07


旧ホームページに、2014.7.18 に書いた記事を転載しています。
この本と、歴史家の網野善彦さんが言っている海民とか悪党の話をあわせて、さらに吉本隆明の共同幻想論でそれらを補強すると、学校で習っていた原始時代のイメージが完全に崩れ去ります。

政治的な主義がどうとか、陰謀論とか、そういうんじゃなくて、「まぁ、ちゃんと普通に考えたらそうですよね」っていうような話としてぼくは興味があって、でもちゃんと普通に考えるってことをしてくれている人は結構少なかったりする。


マーシャル サーリンズ (山内 昶:翻訳)『石器時代の経済学』(法政大学出版局) 「原始時代は貧しかった」というイメージをひっくり返す一冊

その昔、葉っぱにくるんだ虫料理や植物の樹液を食料にしている土地土地の原住民に出会い、西欧の探検家は「こんな粗末なものを食べなければ生きられないほど、この土地の人々は追い込まれている。」と旅行記に書いたのだとか。この観点からすれば石器時代を生きた我々の祖先もそのような環境を生き延びたのだろ う、というのは当然の予測だろうと思います。

しかし、冒頭の探検家の印象は全く的外れで、狩猟採集民のことをちゃんと調べると、かれらは土地土地で何がいつ取れるのかを良く知っており、生活に必要な ものは周りに豊富に見出せる環境でいきている、という”事実”を大量のフィールド調査の結果を元に書きあげています。

”常に生きることに不安を持って生きている原始人”のイメージを崩し、狩猟採集民がいかに豊かであったかを教えてくれる一冊。
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