お金のインタビュー 大谷隆さん その5

公開日: 2016-03-05 お金

「常識になるには経緯があって、それを見ると怖い事の正体が分かったりする。」

小林:最近江戸時代の本を薦められて読んでるんだけど、結構面白くて。藁を何にでも使うんだって、でも藁ってお米を作ればいくらでもできるから生活に必要なものがなんでもできちゃうんだって。

大谷:あの、藁細工をやってる知り合いがいて、今55歳くらいだと思うけど、40歳くらいのときに「これから確実に亡くなるものをやる。」って決意して、 藁細工をやることにしたんよ。その人大企業で働いてるんだけど、休み全部使ってやっていて、例えば「秋田の山奥で、こんな藁細工作れるおばあさんがい る。」って聞いたら行っちゃうんだって。
 
基本的な技術は分かってるからすぐに習得できるらしいんだけど、今やその人は日本中の藁細工技術を身に付けちゃって、伝統工芸協会か何かの会長に若くしてなってる。今東京にいて、たまに関西に来るときに、「これはどこどこ地方のしめ縄」藁細工教えてくれる。
自給自足って言ったときに、多くの人は食べ物をイメージするんだけど、食べ物だけあればいいわけじゃなんよ。で、道具とかって藁で作ることが多いから、自給自足の一部分を担える。

工芸品とかは商品だから技術が残るんだって。でも、藁細工って農家が自分でやるから、置き換えが早いんよ。ビーチサンダルがあれば藁草履はわざわざ作ろう としないし、だれも専門でやる人はいないから残らない。竹籠職人は残ってるけど、藁は残らないって、その人はそこに気がついてやろうと思ったらしい。

そう言う事をあんまり考えたくない。だから常識なんだけど。でも常識になるには経緯があって、それを見ると怖い事の正体が分かったりする。

常識を考えるのに参考になったのは網野善彦さん。非差別民と呼ばれてる人たちは、もともとは天皇と関わりの深い、権力を持った特殊な仕事についている人た ちだった。だから恐れられていた。死体を扱うとか、お金を扱うっていうのは特殊な仕事で、それを扱える人っていうのは少なかった。それが扱える場っていう のも限られていた。

市っていうのは、お金さえあれば誰とでも物が交換できる場。通常それはありえなかった。市場に行けばあんた誰ですかって聞かれない。そこに関われるのは聖域とか、そういうものと関係している人たちで、特殊な力を持つ人たちだった。


小林:それくらいお金のパワーを封じてると言うか限定してたんだ。

大谷:そういうことを、ほとんど記録が残ってない。当然だけど、権力者に都合が良いことしか残らないから。それを網野さんは文献から読み解いていく。

小林:この辺の話だけでも、もう一回インタビューできそうだね。時間が来たので、一旦今日はここで終わろうと思います。ありがとうございました。

大谷:ありがとうございました。
おわり
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A

0 件のコメント :

コメントを投稿